警察に関するお話

97年7月

 97年7月6日。1通のメールが届いた。

はじめまして。M山 **といいます。
お願いがありまして、メールをお送りしております。
あなたの伝言板の掲載に、いたずらがあります。

おちんちんほしいの 投稿者:S****子  投稿日:07月05日(土)22時34分39秒
(電話番号が記載されています。)

の投稿はいたずらです。
私の掲示板にも書き込みがあり、苦情が来ました。
できればですが、書き込みを削除してください。
(本人はインターネットをしていない為、私が代理にて依頼)
また、アクセスログが残っていましたら、メールにてIPアドレス等を
教えて頂けると大変たすかります。

どうか、よろしくお願いします。

 大抵の人は予想が付くと思うが、こういうのは大抵いたずらかヤラセである。電話しないほうが身のためだと思うが、結構電話してしまう人が多いらしくSさんはかなり困っていたらしい。

 minibbsはデフォルトでリモートホストを記録するようになっているので、ログを取った上で書込みを削除。M山さんには対処したこととホスト名を返信しておいた。(ちょっと知識がある人ならこんな風にいたずらしないが、この犯人は何も小細工せずに書き込んでいったのである。)

 削除はしたものの、同様の書込みが翌日もその翌日も続けられた。しかも一度に何回も書き込んでいくというありさまだった。書かれては消すという状態が続いた。

 そうこうするうちにSさんがプロバイダにも同様の連絡をしていたらしく、プロバイダのFさんからメールが来た。内容はほとんど上のメールと同様だったが、プロバイダの持っている情報から犯人探しが出来ないかなどメールで相談を行なうことが出来た。Sさんとも直接電話したところ、相手のプロバイダにも連絡したし、警察に被害届を出したということだった。犯人に対して伝言板で警告して欲しいとの要望があったので以下の文章を載せた。


ここ数日「S****子」さんという方の名前で伝言と
電話番号が書かれていましたが、いたずらであるという連絡を受けていました。

 私の方では発言削除をしていたのですが、連日書き込まれるため、
Sさんの方ではかなり迷惑しており、警察やプロバイダへ
通報したそうです。

今後、同じ発言があった場合、電話をしないようにお願いします。

 またあなたのプロバイダは分かってますよ
プロバイダや警察に突き止められる前にやめた方が無難です
>書き込んだJネットの方

 以後、当ウェブページではSさんの名を騙った書込みはなくなり、事態は収束したかに見えた。

97年10月

 しかし10月頃に再びプロバイダから連絡があった。

 犯人は他の伝言板で書込みを行なっていたらしい。また7月には別の事件があって対応出来なかった警察がようやく捜査を始めたらしく、私の連絡先を知りたがっているとのことだった。とりあえずプロバイダ経由でメールアドレスを伝えたのであるが、向こうにはメールが使える環境がなかったらしい。こういう場合、普通なら「メールは使えないので電話番号を教えて欲しい」ともう一度問合せると思うが、何と「令状を出すから連絡先を教えろ」とプロバイダに要請したのである。この事により、「警察は信用出来ない。なるべく協力したくない。」という気持ちが湧いた。

 「令状を出されたら情報を渡すしかない」とプロバイダが言うので以下の約款に反しないかと聞いたところ、

第30条 (機密保持)

当社は、利用契約の履行に際し知り得た会員の業務上の機密(通信の秘密を含みます)を、第三者に漏らしません。但し、当社の定める規定のダイレクト電子メールを発行する際に、当社が認めた第三者に限り一般的な統計情報などを公開することに会員は同意しなければなりません。(個人情報の公開はいたしません。)

 以下に示されている「その他の法令」が優先されてしまうらしい。現状では国内のプロバイダを使っている限り、プライバシーの保護は出来ないということなのだろうか。

第1条 (取扱いの準則)

ヴィジョンアーツインターネット株式会社(以下「当社」とします)は、電気通信事業法(昭和59年法律第86号。以下「法」といいます)その他の法令の規定によるほか、法第31条第5項の規定に基づき当社が定めたこの「BROADWAYインターネットサービス約款」(以下「この約款」といいます)によってBROADWAYインターネットサービスを提供します。

 一方どこで調べたのか知らないが直接家にも電話がかかってきた。一体どうやって電話番号を調べたのかは聞いても教えてくれない。(所謂「詳しいことは署で」という奴。ドラマだけでなく実際にやってるんですねぇ。)
事情を聞きたいので警察まで来てくれないかということだった。Sさんは北東北の女性であり、担当していたのは現地の警察署である(私は関東に住んでいる)。行くのは大変であるが、当然交通費が出るだろうと思って聞いたところ、なんと交通費は出ないと言うのである。
 当然断った。こんな頼まれ方をされて承諾する人間がいるだろうか。そもそも私が管理人を名乗っているとは言え、全てのデータはプロバイダが持っているのであり私が直接話さなければ分からない情報というのはあまりないのである。
 相談の上、近くの警察署まで来てもらうことにした。(それでもそこまでの交通費は自腹である。)
 単純な疑問なのだが、はたしてこんな体制で警察に協力する人間はいるのだろうか。この警察の態度は協力をお願いしているとはとても考えられず、一般的に考えたら「強制」である。

 また予想されることではあるが、警察の持つパソコン環境はかなり貧弱なようだ。
捜査上、当ページを見に来ることも必要に思われるが、全く見ていなかったようで私の口から「アダルト系ページである」ことを初めて聞いたのである。
(ただ、警察の設備としては持っていなくても署員に一人くらいインターネットに詳しい人間がいてもよさそうなものだが・・・。別のネットでの知合いに警察庁関係の人間がいるのだが彼はパソコンを何台も持っている。

警察に事情説明してから数日後。犯人は逮捕され新聞に小さく載った。

 と言うようにインターネット上の行為であっても実際に逮捕されることはある。これはいたずらされる側にとってはいい事であると思うが、上記のように警察に簡単にプライバシーが洩れてしまうのは考え物だ。

 インターネットを規制しようという動きがあるが、インターネットを理解していない人間による規制は理不尽であり、文化の破壊である。少なくともインターネットの仕組みぐらいは理解して欲しいものである。

’99.5.6追記
 先日この事件を担当した警察署の方から個人的な依頼があり、警察署名を削除しました。あくまでも依頼であり、圧力ではありませんでしたので誤解しないでください。
 当時は上記のように警察は全くの無知といっていい状況でしたが、最近ニュースでも報じられたようにようやくネット犯罪にも対応出来る体制を全国的に揃え始めたようです。
 もっともまだまだ不十分だとは思いますが・・・

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